法定後見制度の手続きの流れ
成年後見制度は加齢や認知症、障がいなどにより、判断能力が不十分な方を支援するための制度です。成年後見制度には大きく分けて法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
この記事では、法定後見制度を利用する際の手続きの流れについて解説します。
法定後見制度とは
法定後見制度は、判断能力がすでに低下している人を保護するために、家庭裁判所が後見人等を選任する制度です。
法定後見制度の流れ
法定後見制度を利用する際の手続きの流れは以下の通りです。
- 相談と必要書類の準備
- 家庭裁判所への申立て
- 家庭裁判所での審査
- 後見人等の選任
- 後見の開始
相談と必要書類の準備
一般的な流れとして、法定後見制度を利用する前には家庭裁判所や専門家(司法書士、弁護士、社会福祉士など)に相談をし、後見の必要性や本人の判断能力に応じた適切な制度についてアドバイスを受けます。
後見申立てには、家庭裁判所に提出するために以下のような書類が必要です。
- 申立書
- 申立書の付表
- 申立人の戸籍謄本
- 後見人等候補者の戸籍謄本、住民票、※身分証明書、登記事項証明書
- 本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書
- 医師の診断書(判断能力の程度を証明するため)
- 親族の同意書(必要に応じて)
※この場合の身分証明書とは、本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていないという証明書のこと。
家庭裁判所への申立て
申立人は、本人の配偶者や四親等以内の親族、本人自身、または市区町村長が行います。
家庭裁判所に対して次の3種類の中のいずれかに関して法定後見の申立てを行います。
- 後見:判断能力がほとんどない状態(例:重度の認知症や知的障がい者)
- 保佐:判断能力が著しく不十分な状態(例:中程度の認知症など)
- 補助:判断能力が一部不足している状態(例:軽度の認知症や軽い精神障がい)
家庭裁判所での審査
家庭裁判所は申立てを受理した後、本人の判断能力を確認するために必要な調査や面談を行います。
調査の方法には、医師の診断書に基づく判断や本人との面談、親族への聞き取り調査などが含まれます。
家庭裁判所調査官や裁判官が申立書の内容や本人の状態を確認し、後見人等候補者についても調査を行います。
後見人等の選任
家庭裁判所は申立人が推薦する後見人等候補者の適格性を判断し、適切な人がいればその方を後見人等に選任します。
親族以外の場合、司法書士や弁護士、市区町村の福祉担当者といった専門家が後見人等に選ばれることもあります。
裁判所が後見人等を選任した後、選任通知が申立人と後見人等候補者に送付されます。
後見の開始
後見人等が選任された後、家庭裁判所によって「後見開始」の決定がされます。
後見の開始後に後見人等が行う支援の範囲は以下の通りです。
- 後見人:判断能力がほとんどない方を全面的に代理・支援する
- 保佐人:判断能力が不十分な方に対し、特定の重要な法律行為について支援する
- 補助人:部分的に判断能力が欠けている人に対して、本人の希望に基づき特定の法律行為を支援する
まとめ
法定後見人手続きには、家庭裁判所への申し立てや診断書の準備、申立書の作成といった多くの書類手続きが必要です。
書類の不備や誤りを防いでスムーズに手続きを進めるためには、法的知識や法定後見手続きに精通している司法書士や行政書士といった専門家のサポートを受けることをおすすめします。